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第七回 お浜降り

「お浜降り」とは、文字通り神輿が海岸に降りることですが、各所で所作は異なっています。
 元々は波打ち際に神輿を舁きだし神事をしたことを意味していたと思われます。
 あるところでは神輿を海水に浸けるのがお浜降りとされ、これは海中渡御とも別称されますが、またあるところでは駕輿丁が足元を濡らすだけでも海中渡御とされています。
 では何故海へ渡御されるのか?これが長い間のわたしの疑問でした。そのことが今となって少しずつ理解出来るようになってきました。

 神は年に一度(毎年出来ないところは式年祭で)、神輿にのられ海に赴き、神衣替えのように新しく代わられるのではないでしょうか。『古事記』にも海水で目を洗うと新たな神が生まれたという記述があります。
 「お浜降り」のときには、神職が海に向かってお払いをして、神輿が海に向かって進んで行きますが、神輿の「前方の海」は特に重要で、神の見ている方向が浜降りの行(ぎょう)の場なのです。
 ここで行われる行がもっとも重要かつ神聖な神事なのです。

 「浜降り」の最中に、駕輿丁をまねた衣装を着けたりして、神輿より先に海に入り、正面から「浜降り」を写真撮影する人がいますが、波打ち際より先の一体の海が神輿の行(ぎょう)場であることを考えれば、潔斎もせずに海水に入るなどということは「浜降り」の意味や神聖さを理解していないことになりますので注意したいものです。

 神輿渡御は海に限らず川や池など水に関係する所へ行くことが多いことも興味深く、研究していきたい課題です。

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