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第五回 神輿と舁手衣装(1)

神輿(宮神輿、以下神輿と記す)に奉仕する舁手(輿丁)の衣装は、関西と関東では大きく違います。関西は白を基調とした袢纏、法被そして白丁、白張に対し、関東は職人袢纏を基とします。
 衣装がこのように大きく異なるのは、神輿そのものの成立から出ているものでしょう。関西の神輿の多くは、その地区の代表される神社で奉納保有されるのが通常です。ですから最初から神社所有の神輿なのです。神社神輿は数多くの絵図に残されている通り白装束で神輿は舁かれています。周辺の神社の神輿保有の起因は中心の神社を参考にします。当然祭り衣装も同様になるのです。 

 これに対し関東神輿はどうでしょう?一部の神社以外、古い祭礼が残されておりません。激動の表舞台に直面したので伝統は消えてしまったでは、済まされるとは到底思われません。江戸時代に制作された神輿が舁かれているのはいくつあるでしょうか?神輿は制作時代を後世に残す生き証人であると同時に、舁かれて初めて当時の職人の技術を再確認できる時です。
 江戸文化が今に残るといわれる祭礼に出会うために関東周辺訪ね歩きましたが、巡り合えるのは至難の業です。神輿の改造も多く、もっとも寂しいのは新造に近い大改造です。昔の職人の技量に達しないなら、最小限の修理にするべきと思えたことは幾つあったやら。。。
 話が本筋から脇道へ随分逸れてしまいました。

 関東神輿には純然たる宮神輿は少ないですが、その中で堂々と神幸祭で舁かれてくる神輿は、関西同様舁手衣装は白丁や白張が主です。 
 関東では何々神社の宮神輿といっても元はその村全体で購入した神輿であるので、本来ならば「惣町の神輿」であり、その後神社境内に保管されていたので、いつしか「宮神輿」となったのです。こんな経過があるので、町内渡御以外神事がありません。
 宮神輿の舁手は輿丁と呼ばれ、祭り当日は特権階級を得て振舞えましたが、それ以外には特権はありません。輿丁と一般舁手の違いは衣装に現れました。そこで職人袢纏の登場であります。 
 次回は関東で大いに持てはやされた祭り袢纏について語ります。 

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