神輿思惟(みこししい)、御輿思惟
―――― 今むかし ――――
神輿回想録 (第三回)
玉前神社
鎮座地 千葉県長生郡一宮町一宮
千葉県は北より下総國、上総國、安房國からなり上総國の一之宮は玉前神社である。
上総最高位の神社で、平安時代に制定された延喜式神名帳にも列格され、そして名神大社にも記載されている。
当然このような神社であるので歴史的な由緒は数多くの書で学び取れるが、ここではそれ以外どうしても書き残したいことがある。
玉前神社の祭りは9月10日より13日まで行われ、玉前神社例祭の13日には若宮様と大宮様と称する二基の神輿が九十九里海岸最南端の釣が崎のお旅所へ渡御され、近郷近在の神輿十二社(基)と出会うので別名「玉前十二社祭り」「上総の裸まつり」などと呼ばれる。ここで玉前神社の神輿を観ると、通常露盤上の鳳凰の足より四隅へ降ろす力綱はここでは前後の蕨手に渡し、蕨手より舁つぎ棒(轅)へ真下に垂下されるのが普通であるが、左右の綱を正面そして裏面でクロスさせ締めるという独特の結び方である。
昭和50年9月13日撮影
昭和50年9月13日撮影
平成26年9月13日撮影
昭和50年9月13日撮影
私の記憶が間違っていなければ、この写真の昭和50年以降玉前神社の神輿は修復されていると思う。
一方、ここ数十年で多くの神輿は太い紫色の絹紐に付け替えてしまったのが目に付く。
ある祭りでこの紐は100万円したとか自慢話に花が咲いていた。そして最後の落ちに隣の神輿は金がないから買えないとも言っていた。私は心で呟いた、玉前神社も晒紐、安房國一之宮の安房神社もそして江戸時代幕府のご加護一番である日光東照宮も晒を使っているのである。そしてこの三社は今も連綿と続けているのである。これが祭りの原点でもある。
神輿を新調もしくは修営する際、関西では元の神輿に類似することを基本にする。千葉県の著名な大社の晒の捩りは神奈川県の各所でも観ることが出来る。
関東神輿の最高傑作は捩りで締めた神輿と言っても過言ではない。